
あおり運転の被害者になったら、最初にすべきこと
2024年05月13日 14:42
あおり運転とは一体どのようなものを指すのでしょうか。この記事ではあおり運転の罰則や対処法について解説します。
目次
あおり運転に罰則はあるのか?
あおり運転被害の実態とは?
あおり運転の被害にあったときにすべきこと
あおり運転対策でしておきたいこととは?
あおり運転の被害にあったときに助けてくれる存在
あおり運転に罰則はあるのか?
以前は、あおり運転を対象にした罰則がなく、刑法の暴行罪を適用していたときもありました。しかし、あおり運転の厳罰化を求める声を受け、2020年6月、あおり運転を対象にした罰則が道路交通法に新設されました。これは、通称を妨害運転罪というもので、以下の10類型が罰則の対象となりました。
通行区分違反
急ブレーキ禁止違反
車間距離不保持
進路変更禁止違反
追越しの方法違反
減光等義務違反
警音器使用制限違反
安全運転義務違反(幅寄せや蛇行運転等)
最低速度違反(高速道路での低速走行)
高速自動車国道等駐停車違反
これらの行為を、他の車両等の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行った場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。さらに、行政処分として、違反点数25点で、一発で免許取り消しとなります。
また、これらの行為により、道路における著しい交通の危険を生じさせた場合には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金、違反点数35点と、さらに重い罰則が科されます。
こうしてあおり運転が明確に罰則の対象になったので、もし被害にあったら迷わず警察に連絡しましょう。それでも、実際に被害にあうと冷静に対処できない場合も少なくないでしょう。もしものときのために被害の実態や対処法をあらかじめ知っておくとよいでしょう。
あおり運転被害の実態とは?
実際にどのくらいのドライバーがあおり運転の被害にあっているのでしょうか。2019年9月にチューリッヒ保険会社が行った「2019年あおり運転実態調査」によりますと、あおり運転の被害にあったことがあるドライバーは59.8%でした。具体的なあおり運転の内容は以下のようになっています。
あおり運転の内容(複数回答)割合あなたの自動車に激しく接近し、もっと速く走るよう挑発してきた74.0%車体を接近されて、幅寄せされた23.5%必要のないハイビームをされた19.5%執拗にクラクションを鳴らされた18.0%左側から追い越された14.8%
この調査結果を見るとあおり運転が非常に身近なものであることが理解できるのではないでしょうか。今後罰則ができることで、被害件数は減る可能性もあるかもしれません。しかし、運転をする人にとっては「あおり運転」は、より身近な危険として備えておくべきものといえるのではないでしょうか。
あおり運転の被害にあったときにすべきこと
もしあおり運転の被害に遭遇してしまったら、私たちはどう対応するのが最善なのでしょうか。あおり運転は、幅寄せ、割り込み、車間距離を異常に詰めるなどの行動によって、自動車を使って他車の運行の妨害をしたり、危険を引き起こす行為です。
考えてみてください。自動車とは、減りつつあるとはいえ、毎年数千人の死者を出す危険な道具です。この道具を振り回して、あなたに危険を及ぼそうとしてくるのです。あなたが町で包丁を振り回す人がいたらどうするでしょうか。そのようなつもりで考えれば、対抗してあおり返すなど危険すぎることが理解できるでしょう。
まずは、なるべく人が多くいる駐車場などに避難しましょう。高速道路上であればサービスエリア・パーキングエリアなどに入るのもいいでしょう。また、近くに交番や警察署があれば、必ずそちらを頼りましょう。絶対にやってはいけないことは、人の目がまったくない場所に停車することです。
また、車を停めた後に車外に出ることも危険です。ドア越しであっても相手との直接交渉は厳禁です。停車したら、相手が車内に入ってきたりすることを防止するためにも、ドアロックを忘れないようにかけておきましょう。車内から110番で警察に通報するようにし、車外から大声で脅されても絶対に車から出ないように心がけるとよいでしょう。
あおり運転対策でしておきたいこととは?
あおり運転の被害にあったときの対応法について紹介しましたが、被害にあう前にドライバーができる対策についても確認しておきましょう。推奨したいのは以下の方法です。
ドライブレコーダーの設置
スマートフォンのカメラでの撮影
緊急通報システムが付いている車に乗り換える
ドライブレコーダーの設置までは難しい人でもスマートフォン・携帯電話での撮影は比較的行いやすいのではないでしょうか。いざというときすぐに手元のスマートフォン・携帯電話で撮影できるように運転前に準備しておくことをおすすめします。また、最近では車内にあるボタンを押すだけでオペレーターとつながり、代わりに緊急車両を要請してくれる緊急通報システムが搭載されている車も登場しています。
車の買い換えを検討しているなら、このようなシステム付きのものを検討するのもいいかもしれません。
あおり運転の被害にあったときに助けてくれる存在
ドライブレコーダーや車内緊急通報システムも役に立つが、あおり運転の相手から脅しの言葉を投げかけられたときには「弁護士に相談する」という趣旨の話をすることも効果的です。
あおり運転をしてくる人からすれば警察はもちろんですが、法律の専門家が出てくると太刀打ちできないと考えることも少なくありません。実際に相談するかどうかは別として、弁護士の存在を示唆することは有効な武器になるはずです。
また、不幸にもあおり運転の被害に遭ってしまった場合には、事後に弁護士に相談することで、民事手続きとしての損害賠償請求や刑事手続きとしての被害届けの提出、刑事告訴などの法的措置をとることができます。そうした場合には、証拠が必要不可欠となるため、ドライブレコーダーの搭載やスマホなどでの撮影が有効でしょう。
さらに、弁護士保険に加入しておけば、あおり運転被害にあった場合にも相手方への牽制に利用することができるでしょう。ドライバーにとって身近なトラブルであるあおり運転に備えるために、検討してみてはいかがでしょうか。
【監修弁護士】
平岡 将人 弁護士
弁護士法人サリュ前代表
第一東京弁護士会 所属 弁護士
第一東京弁護士会人権擁護委員会 所属
日本交通法学会 所属、経営法曹会議 所属
主な著書として
「虚像のトライアングル」(平成27年)
「適切な賠償額を勝ち取る 交通事故案件対応のベストプラクティス」(令和2年)